ショートカット

彼の部屋はいかにも1人暮らしって部屋で、
すっきりしてる。
悪く言えば、何にもない。
クローゼットのドアが微妙に閉まっていなくて、
シャツがはみ出てたり、
洗濯機に洋服が放り込んであるのが、
いかにも男の1人暮らしって雰囲気。

コーヒー淹れるにも、
鍋でお湯を沸かしてたり、
ドライヤーがない！と思ったら、
なぜかコタツの下にあったりと謎も多い。

数日間一緒にいて
（とはいっても、途中仕事に行ったりしたけど）
妙にヒートアップしてるUさんに、
ちょっと不安になったりもする。

どうして同棲とか結婚とか
（冗談だろうと思っているけど）
言っちゃうんだろう。
「同棲しようよー。」とか「結婚を前提に。」とか
言われちゃったのね。
遠いのに、合鍵も渡されかねない雰囲気だったし。
それに対して、冗談ぽく冷たく返してしまった。
「やだー。」とかね。

なんであんなに無防備なんだろう。
『おかず大全』なんて本、ふつー隠すよね、
昔の彼女のものでしょ。
堂々と本棚に。
きっとそこらへん、抜けてるんだろうな。
気にしてないっていうかね。

どうしてあんなに何でもしてくれるんだろ。
私は何にもする必要ない。
起きたらコーヒー淹れてくれるし、
ドアは必ず先に開けてくれるし、
なんでもかんでもやってくれちゃう。

おまけに、いろいろ謝られる。
謝んなくていいのに。

好きだけど物足りない気がする。
私にはすることが何にもない。